バルコニーの腰壁、目隠し

代々木の二世帯住宅は、子世帯の2階に6畳分の広さのバルコニーがあります。バルコニーと道路間の境界面の作り方によりバルコニーの性格は大きく変わります。また外観の表情も変わってきます。代々木の二世帯住宅では、高さ25ミリ幅40ミリのピーラー材を25ミリの隙間を開けたルーバーを目隠し壁としています。このルーバーは40ミリの奥行きを持たせているところが、大事なところです。ルーバーに奥行きがあるので、道路から見上げる視線をカットすることができます。立面的には50パーセントの開口率なので、バルコニーから水平方向を見るときは、外の風景が結構見えるのですが、道ゆく人からの視線はある程度カットできるという意図で断面設定をしました。バルコニーから外を眺めています。

道路からの眺め。ある程度視線は遮られます。

前野町の家にもバルコニーがあります。この住宅では高さ105ミリ巾20ミリのデッキ材を20ミリの隙間を開けて並べルーバーとしています。梁が現れた軒天井の雰囲気と合わせ、少しラフな作り方がこの住宅では似合うかと考えました。
また、床のデッキ材として使ったセランガンバツをルーバーにも使うことで、バルコニーを作り上げる要素に統一感を与えることを意図しています。この住宅ではルーバーの上に簾を取り付けられるようにしています。左が取り付け時の写真。

金属で目隠しを作ることもあります。木のルーバーでは何年か毎の塗装が必要になりますが、金属で作るとその手間がなくなります。千駄木の住宅では、3階のバルコニーにエキスパンドメタルを使っています。エキスパンドメタルで作られた腰壁の外からの眺め

バルコニーからエキスパンドメタル越しに見た道路

青梅の方で作ったこの住宅も当初はエキスパンドメタルの目隠しを考えていました。この住宅には道路を隔てて反対側に公園があり、エキスパンドメタルの半透明の目隠しとして、バルコニーからうっすら公園が見えるぐらいが良いと考えていました。しかし現場に入り、外からの目線は極力排除したいという施主の意向がはっきりしたため、アルミアングルを使ったルーバーに変更しました。左が当初のエキスパンドメタルの案。右が採用されたアルミアングルの案。縦横40ミリのアルミアングルを10ミリの隙間を開けて並べています。アルミアングルの刃にけられるため、道路からバルコニーの中はほとんど見えないと思います。慎重を期するため原寸の模型を作り施主了解を得た上で制作してもらいました。


オランダの集合住宅などを見ると、目隠しがほとんどない開放的なバルコニーが散見され、都市と住宅の距離がとても近いことを感じます。日本の街と日本の生活では、そのようなライフスタイルは難しいのでしょう。多くの場合バルコニーは街に対して閉じることが望まれるようです。

著者情報

角倉 剛
角倉 剛
私にとってのデザイン(設計)は問題解決です。どのような解き方をするかに設計の力点を置いているため、スタイル(モダン和風とか北欧風とか)にはこだわりません。
お住まいになる方の好みとか、建てられる場所の環境に相応しいものを作りたいと思っています。住宅は住まわれる方にとって、好きな洋服の延長のようなものであってほしいと考えています。 詳しいプロフィールはこちら