House

前野町の家 簾とルーバーで守られた大きなバルコニーがある、板橋区の木造3階建て住宅

二層吹抜けのインナーテラス すだれの目隠し 二層吹抜けのインナーバルコニー 二層吹抜けのベランダ 二層吹抜けのベランダとすだれ 玄関 引き戸の玄関扉 二層吹抜けのインナーテラスの夜景 簾をつけたインナーテラスの夜景 玄関扉から見た土間と螺旋階段 土間から子供部屋を見る 三室に分けることができる子供部屋 子供部屋から土間を見る 子供部屋から土間を見る 螺旋階段から土間を見る 螺旋階段からダイニングを見る キッチンからリビングを見る 二層吹抜けのリビング 簾を取り付けたバルコニー 簾を取り付けたバルコニー ラワン合板の壁仕上げ 造作の机とテレビ台 リビングとバルコニー バルコニーの三角屋根 バルコニーの簾 簾をとったバルコニー キッチンとダイニングスペース キッチンからバルコニーを見る 螺旋階段 螺旋階段からホールを見る ホール ホールから見た螺旋階段 ホールから見た螺旋階段 ホールから吹抜けを見る ホールからバルコニーを見る 主寝室 土間から洗面室を見る 白い空間の洗面室
1 / 38
計画地東京都板橋区前野町
期間2020.1~2020.10(設計) 2020.11~2021.4(工事)
敷地面積70.04㎡
建築面積48.05㎡
延床面積104.26㎡
規模・構造木造3階建て
設計・監理角倉剛建築設計事務所
小島大輔構造設計事務所
施工江中建設
外部仕上げ屋根/ガルバリウム鋼板一文字葺き
外壁/ガルバリウム鋼板一文字葺き、サイディング
内部仕上げ床/フローリング 、ラワン合板、モルタル、長尺塩ビシート
壁/EP塗装、ラワン合板
天井/EP塗装
その他写真撮影 吉田誠

簾とルーバーで囲われた大きなバルコニーで開放的な内部空間を守る角地の木造3階建て住宅

開放的な環境を生かしつつも守られた作り方とする

敷地は住宅地の中の角地にある。角地の隅切り部分が南を向き、南東と南西が道路に面して、光溢れる明るい開放的な環境となっていた。この敷地に建てる夫婦と小さな子供3人のための住宅の計画を依頼された。

建主はこの開放的な環境を評価し、それを生かした家づくりをしたいという気持ちを持ちながらも、同時に周りの視線を気にせず生活できるような、守られた住宅であることも望まれていた。そしてその守られた空間が、家族5人の一体感を感じ取れるような、おおらかなものであることを求められていた。その二つの要望に答えることを目指して計画をおこなった。

建主は、かつては建築設計指導を行なっていた時期がある大学教員であり、当初は自身での設計もお考えになられたが、やはり餅は餅屋ということで設計業務を生業としているところに依頼をすることにした。そんな経緯で始まった設計は、要で建主より適切なコメントや提案をいただき、随分と助けられた。

70㎡というコンパクトな敷地の中で面積を確保するために、平面は敷地をオフセットさせた形をベースとした。北東と北西の隣地境界線側には北側斜線の制約がある。まずは斜線制限ギリギリの断面形を立ち上げた。そして必要と思われる高さとなったところで、南東道路に直行する棟を設けた。棟からは屋根下の空間に適切と思われた緩急二種類の勾配で折り返すこととした。結果として人通りの多い南東道路に対して、切妻の家形の構えをとる少しだけ屋根が複雑な、3階建ての外形が出来上がった。

室内は閉じることが必要とされた部屋以外を全て繋がった空間とすることで、建主が求める「おおらかさ」に答えようとした。3層を貫く螺旋階段を含んだ吹き抜けを設け3つの階を結びつけた。その上でそれぞれの階の様相の違いにより、縦につながるワンルーム空間に様々な生活の場を作りだすことを考えた。

1階は南東道路側に駐車スペースを設け、残りを室内とした。室内は、水廻り以外を4本の柱が立つワンルーム空間として作った。柱間には建具の脱着を想定したレールなどを装備し、建具の付け外しでワンルーム空間から、四つの分節した空間(三つの子供室+玄関ホール)に様変わりできる可変的な空間として作られている。

2階は南東の道路から見て奥となる北西側をダイニングキッチンとして、表となる南東側は切妻の屋根形状に沿った二層吹き抜けのリビングとした。南東道路に面したバルコニーもリビングと同じような屋根形状に沿った二層吹き抜け空間としている。

3階は閉じた主寝室の前に小さなホールを設け、建主のリモートワークスペースとした。リビングからのある程度の距離感を求められたので、吹き抜けに対しては一旦壁で仕切り、小窓で繋がる空間とした。

 

一旦開放的な構えを作った上で、閉じた構えも取れるようにする

バルコニーの軒天井は構造材と野地板をあらわしとした。勾配が急な棟の北東側では、梁は構造上は斜めの柱として扱われ(60度を超えると柱扱い可)、やや勾配が緩い南西側ではリビング側からの持ち出しの梁として扱われる。その扱いの違いが軒天井にあらわれている。

バルコニーは北東の隣地側には壁で閉じ、隅切りと南東道路側に対しては一旦開いた構えとした。その上で金属でフレームを作り、1.1mまでをルーバーで覆った。さらにその上に簾が取りつけられるような金物を設け、簾の開閉で外部からの視線の侵入量の調整を可能にした。

準防火地域の木造3階建てを「3階建て建築物の技術的基準」※で造る

準防火地域内の木造3階建ては多くの場合、準耐火建築物として構造体を石膏ボードで包む必要がある。そのため予算の制約がある住宅の場合は、ビニルクロスの白い壁と天井という単調な仕上げとならざるを得ないことが多い。

この住宅では外壁の開口部制限をすることなどで、準耐火建築物とすることを避けて法に適合させることができた※。

その結果1階の独立柱や、1・2階の梁などを石膏ボードの被覆無しとすることが可能となった。また外壁を構成しない壁については仕上げの制約がなくなりラワン合板を直接貼ることが可能となった。その結果ひとつながりの空間の中で様々な異なる生活の場を作るということを、仕上げの扱いでも補強することができた。

またこの内装材などの扱いは、素材感を活かした家づくりを望まれた建主の気持ちに答えようとした結果でもある。(角倉剛/角倉剛建築設計事務所)

※建築基準法施行令第136条の2に規定されている「3階建て建築物の技術的基準」

写真は南東側外観。バルコニーは隅切りの形状に合わせて作られている。鉄骨フレームに木塀と簾が取り付けられる。屋根勾配により異なる構造形式の違いが軒天井にあらわれている。

 

1階のオープンな空間。120角の柱が4本立つ。柱間に建具を仕込むことで、ワンルーム空間から、四つの分節した空間(三つの子供室+玄関ホール)に様変わりできるように考えられている。当面は左の土間空間と右の空間を分け、右の空間は3人のお子さんが一緒に使う大きな寝室として使われる予定。

1階の土間の玄関ホール奥にある螺旋階段は、上下をなだらかに結びつける開放的な軽快な階段として作った。

螺旋階段から1・2階を見る。1階の土間奥が玄関扉。右手のラワン合板の奥に収納と水回りが収められている。

2階に見えるのはキッチンとダイニング。2階ダイニング天井は梁の下部が表しとなっている。

切妻の形状に合わせて作られたリビングの吹抜けの天井。奥の壁にはL型の家具が造りつけられている。

正面の低い棚はテレビ台。右手の少し高くなったとところは勉強机。90度回転して一番高くなったところはキッチンの手元を隠す収納。

吹抜け左手はバルコニー。右手の3階ラワン合板の壁の奥はホールと主寝室。

 

バルコニーより隅切り方向を見る。デッキより高さ2.3mの鉄骨フレームより簾をたらしている。隅切りの先は道路のため富士見街道への眺めが良い

螺旋階段から2・3階を見る。2階にキッチン前の収納造作が見える。3階はホール。机を持ち込み、テレワークなどを行う書斎スペースとして考えられている。