高円寺の長屋 東京都杉並区 スキップフロアで豊かな空間を演出した長屋

スキップフロアーがクロスする長屋

最小限の集合住宅

T字路のつき当たりに建つ、賃貸長屋の建替え計画。
もともと建っていたこぢんまりとした単身者用４住戸のアパートを、若い夫婦が住めるぐらいの、ゆとりを持った２住戸の賃貸住宅とすることが求められました。

外形は、周辺の住宅地と合わせた切妻の形をベースとしています。インテリアと呼応させながら、T字路を受け止めるように、「く」の字に壁面の形を変形させています。 またT字路に対する正面性を強く意識し、道路側のファサードだけモルタルに白い吹き付け塗装で仕上げ、他の外壁と屋根は全て、黒いガルバリウム鋼板の平葺きで仕上げました。

単純な家型にパッケージされた内部空間は、平面的にはほぼ同一の物を上下に積み重ねた単純なものです。これを断面的な工夫をすることで、豊かな空間を作り出すことを試みています。

具体的には、スキップフロアーが重なる長屋とし、スキップする方向を上下でクロスさせることで、性格が異なる二つの住環境を作り出そうと試みています。採光の上でどうしても賃貸条件が不利となるを下の住戸は、３つのレベルの違う床が繋がる空間として、上の住戸より広い住戸としてアドバンテージを与えています。上の住戸は、構造あらわしの天井で覆われた、おおらかな、気積が大きな空間としています。

下の住戸

下の住戸の玄関は１階にあります。玄関に入ると、小さな土間の先にはキッチンがあり、LDKとして使われます。奥に半階下がった床と上がった床があり、その先にオレンジに塗られた壁があります。半階上がった床の奥の一部には、グレーチングが使われており、半地下に光を落とします。

上の住戸

上の住戸は２階から入ります。２階にはキッチンの前に小さなダイニングスペースがあります。半階上がったところにリビングなどに使うスペースがあります。上の住戸は切妻の形が現れた天井の下の大きなワンルーム空間として作られました。道路側には、「く」の字に折った外壁を利用した、三角形のバルコニーがあります。玄関を上がって直ぐの位置にあるキッチンは、オーナーの要望もあり、天板を薄くし床から浮かし、軽快なデザインとすることを試みました。

水廻り

上下とも洗面室と浴室の作りは同じです。洗面室の奥の浴室はハーフユニットを使っています。洗面室との間はガラスで仕切りました。浴室はトイレと洗面室と視覚的に繋がる明るい空間です。

2020年現在、この長屋はできてから10年たちました。上下ともまだ一回しか借主の入れ替わりがなく、空きの期間もほとんどなく、オーナーには喜んでいただいています。