vol.44キッチン
キッチンは予算がある時は、家具工事で作ることにしています。自宅(参宮橋の螺旋住戸)のキッチンを作る時は、少しグレードを上げオーダーキッチンの専門業者に任せることにしました。コストはかかるが、家具工事で作るキッチンとは仕上がりのグレードはやはり違います。また自宅のキッチンに採用することで彼らのノウハウが勉強できると思い任せることにしました。お願いしたのは、以前何度か依頼したことがある、mobilitipoの徳永さんです。
基本的なレイアウトは全てこちらで決めています。主に実施設計レベルのデザインや機器の選定、そして制作を徳永さんにお願いしました。大きな構成としては、I型のアイランドキッチンとL型のバックカウンターの組み合わせとしました。
吊り戸棚は妻の身長では使いにくいこと、また所帯じみた感じを避けるため、使わないことにして、その分キッチンを大きく作ることで収納量を増やしています。
アイランドキッチン側に冷蔵庫も納める収納を作り冷蔵庫を隠しました。またその収納で、ダイニング側から一部のバックカウンターが見えなくなるようにして、そこに電子レンジなどの家電をまとめておくようにしました。
アイランドキッチンのダイニング側に収納を組み込むことにしました。食器が入る奥行きを確保したため、天板の奥行きは1mと少し大きめになっています。アイランドキッチンは一部テーブル状にして、ハイチェアーを使って食事もできるようにしています。
他に私の方で計画したことは、シンクとコンロが離れ床材が通常のキッチンより汚れやすくなると思われたので、汚れにくい床材を使うことです。キッチン北側のテラス床をタイルとすることになったので、キッチン床もタイルとし、仕上げを揃えました。
天板
天板はステンレスのバイブレーション仕上げ。4ミリぐらいの厚板で作れば、すっきりするのですが、そこまで予算をかけるつもりはなかったので、薄板を曲げて天板を作っています、ただし見つけを10ミリにおさえて、シャープな印象は保つようにしています。ステンレスにつく傷が気になるかと思っていましたが、バイブレーション仕上げの場合あまり気になることはありませんでした。
下台
最も使用頻度が高いと思われる、アイランドカウンター反対側の下台は使いやすい引き出しで作ろうと思っていました。徳永さんが大きく手を入れたのは、箱組の作り方でした。箱を少なくした方がすっきりとして、コストも安くなるということで、幅の大きな上下2段の引き出しにすることにしました。その代わり、上段の引き出しの中には内引き出しが入っています。内引き出しは開けるまでの動作が一つ増えるのが面倒かなと思っていましたが、特に使い勝手の悪さは感じませんでした。私がキッチンをすっきりした印象にまとめるときは、手掛けの金物をなくし、全て扉端部を加工したテーパー手掛けとするのですが、徳永さんは上のみテーパー手掛けとして下の引き出しには金物を使いました。実際使ってみると、下から金物に手を引っ掛けて低い位置の引き出しを引くという動作はとても自然で、このあたりのデザインと使い勝手のバランス感覚はさすがだなとおもいました。
他の収納は全て開戸としています。ほとんどがテーパー手掛けなのですが、冷蔵庫裏の収納だけ、プッシュラッチを使っています。壊れやすいのではないかと思ったのですが、最近のものはそうでもないということで、採用することにしました。扉の裏に見慣れない金物が入っていました。聞くと高さがある扉が将来的に反ってしまうのを防いでいるとのこと。メンテの手間を減らすための工夫でした。そんなメンテに慎重な方が採用したプッシュラッチは信用しても良いかと思いました。
今回はアイランドキッチンのダイニング側にも収納を設けています。食器棚となっているのですが、この位置は結構便利です。一番上を引き出しにしましょうかとの提案を採用しなかったのですが、それはアリだったかなとは今は思っています。
シンクの下は収納とせず、オープンとしています。無印良品のゴミ箱を4っつ並べるスペースとして考えました。4っつあればゴミの分別収納には対応できます。シンク下に浅型とはいえ排水トラップがあるため、中央二つは背が低いゴミ箱になってしまうのは要注意でした。最初は気が付かず、買ってきたゴミ箱を交換することになりました。
今回は全体的に白と明るい木の色を生かした北欧調のインテリアとしてまとめています。下台の面材の色は当然白と考えていましたが、これは汚れが気になるとの妻の一言で即座に却下されました。3階中央のボリュームが薄いグレーで塗られる予定となっていたので、面材の色はグレーとすることにしました。またキッチンに合わせてレンジフード周りの壁はグレーのモザイクタイル貼りとすることにしました。キッチン下台の面材のサンプルでは、かなり濃いグレーが色合いとして良く、それを選ぶことになりました。出来上がったキッチンを見た時は、淡色の北欧のインテリアの中にダークなニューヨークの夜がやってきたような、軽い違和感を感じましたが、慣れてくると気にならないもの。また住み始めてから、キッチンに合わせて、グレーのダイニングテーブルとペンダント照明とソファを買うことになり、今はそれなりにインテリアのまとまりが出てきました。
IH
コンロは手入れのしやすからIHクッキングヒーターとすることを妻が希望していました。火力が気になりましたが、近くのフレンチがIHのみで調理をしているのを見て、初めて使うことになりますが、なんとかなると判断してIHとしました。当初予定していた国産品が半導体不足のため一時的に販売停止となったため、泣く泣く少しお高いミーレのIHを採用することになりました。しかし使ってみてミーレにして良かったと思っています。まずとてもシンプルな作りなので無駄なものがなく使い勝手が良い。日本の家電が親切過多でかえって使いにくくなるのと逆方向の作り方です。また当初予定の国産品より天板からの出っ張りが小さいので、掃除もしやすいです。ミーレの採用と共に魚を焼くグリルをやめて、下台をすっきりさせることにしました(なので徳永さんのシンプルな引き出し構成ができました。)現在魚は電子レンジなどで焼いていますが、それなりになんとかなります。
グリルに加えオーブンもキッチンに組み込まないことにしました。ビルトインのオーブンより置き型のものの方が性能が良く思え、家電を置くスペースを設けてこともあり、置き型のオーブンとすることにしました。
レンジフード
こちらはほぼお任せで、富士工業の普及品を選んでいます。斜めの天井に取り付けるため、付属のステンレスの側板が使いにくく、キッチン下台と同じパネルで覆いました。
水栓 シンク
水栓は、いつもクリンスイの浄水器との複合型を選んでいるのですが、徳永さんもこれが良いとのことで、こちらとしました。シンクは幅826のやや大きめの既製品をセレクトしていただきました。
食洗器
こちらもほぼお任せで、パナソニックの普及品を選んでいます。食洗器は初めて使うのですが、とても綺麗になるらしく毎日使っています。難点は、食洗器に食器を並べて入れるのが結構面倒なこと。評判が良い少しお高いミーレの食洗器であればこの辺りも少し違ったのかなと思ったりしています。
スライドストッカー
自分で設計している時は、いつも15センチ幅のものを選んでいました。それ以上の大きさはないと思っていたのですが、徳永さんが選んでくれたのは30センチ幅のもの。調味料が全て納めることができる収納力があり、とても重宝しています。
使い始めて2年弱ですが、やはりお願いして良かったなと思っています。キッチンは非常に開閉動作が多い家具だと思うのですが、多分金物の選択が適切なのでしょう、開け閉めにストレスを感じることがないです。また仕上がりも気に入っています。メーカーのシステムキッチンが気になるのは、なんだか少しピカピカしたところがあって、建築に置くと浮いた感じがすることなんですが、今回は建築と調整してディテールを決めているので、建築との調和が感じられます。またシステミキッチンとは真逆の方向性にある、シナ合板ウレタン現場塗装などで仕上げた家具屋さんのキッチンもそれなりに味はあるのですが、プロダクトとしての仕上がりのレベルを求めるのであれば、オーダーキッチンの専門業者なのかなと思いました。