vol.15 角が丸い空間
人が、スペースの奥行きを感じ取るためには、壁と壁の入り隅があるということが大事だと感じたのが、初めて角が丸い空間を設計したときです。オフィスビルの改修の設計において、小さな打合せスペースを卵型の空間にしました。
出来上がった空間は、壁との距離を感じ取ることが難しく、ふと気がつくといつの間にか壁が目の前にあるようなスペースでした。真円でなく、歪な輪郭線を持った空間であったこと、白くシームレスに塗り込められた空間であることも影響しているのかもしれません。小さな空間ですが、その狭さをあまり感じないスペースとなっていました。
このインテリアは、まずは既存の天井に配された、空調機器等を避け、必要な面積をとることから始めました。出来上がった形を調整して、結果として卵型の空間として作り上げました。部屋の奥行きがそれほど無いため、天井を意識することがあまり無く、什器がない状態では、眉に包まれたような柔らかい空間となっていました。
柿の木坂の家では、2階~3階~ロフト空間の、壁天井をシームレスに連続させ、茶色のクロスで張り上げました。結果として全体の滑らかな一体感が生まれました。壁と天井の間に生まれる分節のラインは「ここで終わり、ここで始まる」という分節点を感じさせるものであると思います。その分節点が無くなることで、空間も行き止まり感が無い印象になるようでした。