VILLA COUCOU
VILLA COUCOUは、代々木上原駅から徒歩10分程度の場所にある小さな住宅である。吉阪隆正+U研究室の設計で1957年に竣工した。少し前から日時を限り一般に開放されているのだが、先日見学をしてきた。
東側の道路からの外観は基本的には窓が少なく閉じた構えとなっている。窓周りのデザインが面白い。1番上の窓は彫りが深い。その右下の窓は庇のような出っ張りが窓周りについている。一番左下の窓は、何かレリーフのようなものが開口部に被せられている。いずれも東側道路に対して開口部を少し守るような作り方なのだが、理由はわからないのだけど、全て異なる作られ方となっているのが面白い。2階南側に木製の窓があるが、この窓は守られた開口部とはせずに、比較的大きく作られた南側を眺める窓となっている。
建物は右側の2層のボリュームと左側の一層のボリュームで作られている。右側のボリュームは2階の軒を伸ばしているのに対して、左側のボリュームは玄関扉のセットバックで軒を作り出しており、異なるボリュームの扱いが行われている。
玄関周り。コンクリートの表面を削るようにして描かれた絵が右と正面にある。正面の絵の下に「VILLA COUCOU」と書かれた表札(?)が。
扉はエンジ色。エンジ色はインテリアでも多用されていた。扉の右手にある白い巨大化した縦枠には間接照明が組み込まれていた。
中から玄関扉を見る。窓と同じように凹凸のデザインが行われていた。扉のドアスコープは出っ張っており、その左の白い縦枠に穿たれた二つの穴からは間接照明の光が漏れる。左にはスチールで制作された黒い歪んだ円弧の形をした傘かけがある。

玄関の土間。土間の上にエンジ色の不思議な形の盛り上げた場所が作られていた。白い花のような紋様が散りばめられており、下足で上がる気がしなかったので、ここで上足への切り替えをするということなのであろう。上り框と下足入れが離れているので、上足で下足箱の前に行けるようにしたのだろう。
玄関はいってすぐ右手には書斎コーナーのようなスペースがあった。奥の窓の先には外観で気になったレリーフがあり外の視線を切っている。手前の腰高収納で軽く空間を切っている。腰高収納の3枚引戸が少しくすんだトリコロールカラーで塗り分けられている。
書斎コーナーから西側を見る。西側に庭が作られており、庭に対して大きな開口部や吹き抜けが作られていた。吹き抜け空間の右手にキッチンがあるのだが、低い壁で軽く仕切られている。
西側から吹き抜けを通し1階書斎と2階寝室を見る。
吹き抜けの中のキッチン。低い壁でリビングダイニングとは仕切られている。レンジフードの排気が天井に抜かれているのだが、ダクトカバーの径が上に行くほど大きくなるように作られている。リビングダイニングからは柱のようにも見える。腰高収納は扉に色が塗られていたが、キッチン吊戸棚は側板と底板が青く彩色されている。色のつける場所には強いルールはなく、全体のバランスでトリコロールカラーを空間に散りばめている。
壁から跳ね出した階段。手すりが吹き抜け側にないのでスッキリしているのだが、事故を考えるとと少し躊躇してしまうデザイン。階段の下に突然ステンドグラス。いろんなものがある空間なので、違和感は感じない。

2階からの見下ろし、吹き抜けを大きくとり、二層にわたる開口部を作り、庭と一体となったリビングダイニングを作る方法もあるが、そうはしない。むしろ吹き抜けは庭側で一層分に絞り、洞窟のような空間を作っている。開放感には劣るかもしれないけれど、落ち着いた居心地の良さはあるかもしれない。天井に目をやると、いろんな「まる」を作り、照明やトップライトにしている。

2個並びの照明。ダウンライトかと思いきや下から見てもランプは見えない。見えないところにランプは隠し、光だけを見せようということだろう。こんな小さなところも手を抜かない。

こちらはトップライト。かなり上方に小さな丸い開口部がある。

西の庭からみると、屋根から飛び出したトップライトが見える。その形が普通じゃない。庭から見えることも意識して、形にこだわったか。
小さな家だが、デザインの密度が普通じゃない。よくみるスッキリした住宅ではできるだけ要素を減らすという引き算の作り方をするのだが、思いっきり真逆の足し算のデザイン。紹介しきれないほど、まだまだ細かいデザインが散りばめられている。バラバラにも見えるのだけど、楽しそうに見える良さの方がうわまった「かわいい」家だった。細かいところまで目を配り工夫を惜しまない姿勢は学ばねばと思った。
