東京で開放的なインナーバルコニーを作る

屋外でありながら、少し囲われた室内的な雰囲気のバルコニーをインナーバルコニーと呼ぶようです。軒天井があることが多いようです。

代々木の二世帯住宅では施主の要望によるものですが、2階に6畳のインナーバルコニーを設けています。

このバルコニーをどの程度開放的にするのか(閉鎖的にするのか)ずいぶん迷いました。

1)高さがある空間とすること
前野町の家で吹き抜けがあるリビングと一体となった高い空間のバルコニーは開放的になることを実感しました。
代々木の二世帯住宅では、ロフトの分高くなったリビングを延長したようなバルコニーを考えることにしました。

2)リビングの天井からバルコニー軒天井への連続性
これは施主の要望です。天井と軒天井が連なる写真が提示され、このイメージで作って欲しいとの要望がありました。
大きさの規制がある木造の防火のアルミサッシでは、そこまでの連続性をだすことは難しいのですが、一旦それにて検討することにしました。
軒の出はロフトの窓のかかり方を考え少し長めの1.82mとしました。この軒の出に最後まで悩むことになります。

3)バルコニーの壁
旅先の写真ですが、開放的な場所では窓先の壁は邪魔になるのでないほうが良い。
都心や狭小地でインナーバルコニーを作るときに難しいのは、周りの視線を感じない空間とするために、壁を作らなければいけないことだと思います。軒天井があり壁があるとどうしても閉鎖的になりすぎるのです。

代々木の二世帯住宅では隣地側に吹き抜けの高さ一杯の壁を立てました。道路側は通気性も確保するために、木製のルーバーのフェンスを作り、視線を遮ることにしました。通常のバルコニーの腰壁の高さ(1.1M)程度では、すぐ先に道路があるこの場所においては、外に出たくなるバルコニーとすることは難しい。
今回はサッシの高さに合わせて2mとしました。軒天井がなければ、吹き抜けの高さいっぱいのルーバーも良かったのかもしれません。

4)結局軒天井をあきらめ、オーニングとする。
このように決めて図面を一旦纏めたのですが、どうも落ち着かない気がずっとしていました。軒の出とルーバーの高さをほどほどに調整したつもりではあったのですが、いい環境を作り出している気がしない。
バイトに作ってもらった模型を見て感じたのは、バルコニーはほどほどいい環境となるかもしれないが、その奥のリビングは薄暗い空間になっているということでした。思い切って軒天井をバッサリ切るとずいぶんとイサギが良くて気持ちが良い空間となりました。
ただ夏場の直射日光を考えると、サッシの高さの1/3程度の庇は欲しい。また施主要望の軒天井をバッサリ無くしてよいものかも迷いがありました。

いくつかの案を作り施主と協議をして、最終的には軒天井をとりやめ、日除けなどの機能は電動オーニングで対応することにしました。
東京で開放性と閉鎖性を兼ね備えたインナーバルコニーを作るためには、手すり壁の高さや軒の出の慎重な検討が必要だと思います。

著者情報

角倉 剛
角倉 剛
私にとってのデザイン(設計)は問題解決です。どのような解き方をするかに設計の力点を置いているため、スタイル(モダン和風とか北欧風とか)にはこだわりません。
お住まいになる方の好みとか、建てられる場所の環境に相応しいものを作りたいと思っています。住宅は住まわれる方にとって、好きな洋服の延長のようなものであってほしいと考えています。 詳しいプロフィールはこちら