家づくりの依頼先をどこにするか(工務店か設計事務所かハウスメーカーか)

10月のZOOMでの設計相談は、自分たちが書いた間取り図で問題ないか、というのが主なお話でした。
それが終わった後に、家づくりの依頼先をどこにするのが良いかという相談も受けました。その時に話したことが参考になる人もいるかと思い、備忘録も兼ねて記録しておきます。

工務店
今回の相談者のように自分である程度図面が描ける人、自分の考えた通りに家を作って欲しいと思う人は、工務店に依頼するのも一つの手だと思います。
多くの工務店はイエスマンだと思いますので、施主作成の間取りを元に構造や法規面で問題なくするための補正を加えた図面を、下請けの設計事務所に依頼して作成してくれると思います。その場合の設計費用は確認申請を通すだけの図面作成なので、安価に済むと思います。
欠点としては施工性優先の作り方になるので、細部のこだわったデザインなどは期待できないことだと思います。
後はその工務店がどんなデザインをするかですが、作ってきたものを見せてもらい、これぐらいで十分と納得できるならその人にとっての家づくりは工務店への依頼で問題ないと私は思います。

設計事務所
設計事務所の場合は、施主の持ち込んだ図面(よっぽど問題なくできていれば別ですが)をそのままブラッシュアップして図面化すると言う方法はとらないことが多いです。
施主からの要望や敷地や法規やコストの条件などを俯瞰的にみて判断をして設計を組み立てていきます。
また時には施主が大事にしていることの優先順位を変えたり、思ってもいないことを提案したりすることもあります。※(文末に注釈を入れました)

公園前の家ではリビングが1階にあり子供がリビングを通って外に出ると言うのが絶対条件でした。しばらくそれをもとに設計を組み立てていたのですが目の前の公園をうまく活かしきれていない気がして、どうもうまくいかない。
そこで思い切って公園への眺めが良い2階リビングとそれとつながる子供室前の大きな土間空間を提案したところ、受け入れていただけました。

公園前の家の1階リビングの案。リビングが快適に感じられないのが気になっている。

2週間後の案。リビングから寝室までをスキップフロアで繋ぎリビングに開放感を与えられないかと考えた案

同時に出した案。スキップフロアを使うという提案はかわらないが、快適に思われれた2階にリビングを割り当てることを提案。この案の方向性で行くことが決まる。

やはり設計事務所の魅力は設計の提案力だと思いますので、それにワクワクできる人が向いていると思います。
逆に言うと自分の思い通りにならないことにストレスを感じる人は、設計事務所に頼まない方が良いかもしれません。設計事務所は、時には施主の要望から外れたものも良いと思えば提案することがあります。

ハウスメーカー
テレビや雑誌で見るハウスメーカーの家は高級感満載の家ばかりです。そんな空気感が好きな人はハウスメーカーを検討しても良いかと思います。しかしそんな空気感がある家を作るためには営業マンが言う坪単価の倍のコストがかかることは頭に入れておいた方が良いと思います。

※ルイス・カーンは、様々な言葉で「与えられたプログラム(設計条件)をそのまま絶対化して奉っている建築家は、建築家とはいえない。真の建築家は、それを組み立て直し、依頼者が未だ明らかに知ることができないでいることを、明らかにとらえなければならない」と言っている・・・・・・(「建築家のドローイング」香山壽夫 東京大学出版会1994年より)

著者情報

角倉 剛
角倉 剛
私にとってのデザイン(設計)は問題解決です。どのような解き方をするかに設計の力点を置いているため、スタイル(モダン和風とか北欧風とか)にはこだわりません。
お住まいになる方の好みとか、建てられる場所の環境に相応しいものを作りたいと思っています。住宅は住まわれる方にとって、好きな洋服の延長のようなものであってほしいと考えています。 詳しいプロフィールはこちら