リビングデザインセンターオゾンのセミナー

久しぶりにリビングデザインセンターオゾン(以下オゾン)主催の住宅の設計コンペに参加しました。オゾンに登録している建築家の中から建主が3組の建築家を選定し、その3組が競い合うのですが、今回その1組となりました。案の提案後にプレゼンテーションを再現するセミナーが開かれ登壇者として参加し、コンペを通じ思ったことを話してきました。

振り返って考えると、今回の自分の案は、比較的要望に素直に応えようとした案かなと思いました。それは建主の「できるだけ間仕切りを減らし、広いワンルームのような空間に暮らしたい」という考えに共感したからだと思います。自分が自宅を作る時もそのような思いで取り組んだこともあり、そんな空間を提案したいと考えました。

それに対して他の建築家の案では、要望にはないものが提案されていました。一人の建築家は、3階からしかアクセスできない2階の寝室を提案してきました。一人の建築家は、寝室内にキッチンを設けることを提案してきました。建主が望んでいなかった(想像していなかった)提案が出てくるのが、建築家コンペの面白さだなと改めてコンペの後に感じました。工務店やハウスメーカーへの依頼ではなかなか出てこない提案だとなと思いました。私自身も要望をもっと読み込み、もう少し踏み込んだ提案をすべきではなかったかと反省もしました。

想像していなかった案が出てくる面白さがある建築家コンペですが、しかし万人に向いているわけでもないと思っています。
以前キッチンを造作で作ることを提案していたのですが、最終的にシステムキッチンを建主が選んだことがあります。「これからどんなものができるのかがわからないものより、目の前で自分で確認できるキッチンの方が安心できる」というのがその理由でした。その方にとって家づくりとはショッピングのようなものだと思いました。さまざまな既製品をカタログで選びその中で気に入ったものを選んでいく、そんな作り方を望まれる人は、ハウスメーカーでの家づくりが向いていると思います。

昨今では、家づくりに関する情報はネットを調べれば、いくらでも出てきます。またこれからAIもますます進化するでしょうから、家づくりを考えることのハードルは低くなっていくでしょう。自分が調べて、自分で思う通りの家づくりがしたいという人は、むしろ優秀な工務店での家づくりが向いているのかもしれません。

想像していなかった案が出てくる、そこにはリスクもあると思います。そのリスクを引き受けて、むしろそれを面白いと感じることができる人が、建築家コンペ(あるいは建築家に依頼すること)に向いているんだろうなと改めて思いました。

著者情報

角倉 剛
角倉 剛
私にとってのデザイン(設計)は問題解決です。どのような解き方をするかに設計の力点を置いているため、スタイル(モダン和風とか北欧風とか)にはこだわりません。
お住まいになる方の好みとか、建てられる場所の環境に相応しいものを作りたいと思っています。住宅は住まわれる方にとって、好きな洋服の延長のようなものであってほしいと考えています。 詳しいプロフィールはこちら