箱根本箱(リフォームの好例です)

6月22、23日に中強羅にある、箱根本箱に行ってきました。この建物は日販さんの保養所をブックホテルに改修した建物です。誰かが言っていましたが、泊まれるツタヤのようなところで、2018年6月にできた新しい建物です。

エントランスロビーを2階から見たところ。両側に本棚が並び、大窓からの眺めが良い、メインの空間です。

階段は、登りながら本を眺める、ゆったりとした階段でした。

本棚の中に入り読書ができるようになっています。高いところの本も取れるように梯子がついています。
メインのロビー空間はかなり作り込んでいましたが、それ以外の空間は既存のものを剥がすことをデザインとしていました。

多くの壁は、既存の石膏ボードを剥がしてコンクリートの肌を見せることでデザインとしていました。

また一部の天井は剥がされダクトがむき出しとされていました。

ショップコーナー。ボードを張っていた丸いのり跡のパターンをデザインとしています。

ホテル内のレストラン。地元産を使うことにこだわり、提携してくれる農家さんなどを探したとのことでした。

うまいなと思ったのはサッシの見せ方です。改修物件では、サッシまで取り替えることは予算面で厳しいことが多いです。他の内装がどんなに綺麗にされていても、古いサッシがそのままなので、少し残念な思いをすることが多いのです。しかし箱根本箱では違和感なくサッシがおさまっていました。

サッシのディテールです。古いサッシの内側に木を取り付けて隠していました。
訪れる人の7割がホテル内の本を買っていくということなので、今の所ブックホテルというコンセプトはうまくいっているようです。コストを抑えようとすると往往にしてチープな材料を使って、安っぽく見える改修になることが多いのですが、剥がしてそのままうまく見せるという方法で、上手くコストコントロールされていました。またオリジナルのトイレのサインに至るまでデザインされており(男女共、髪の毛の先がほんの少しとんがっている)、設計者の目が行き届いている印象を受けました。施設の中には、シアターや小さなベッドだけしかない宿泊スペースなどの不思議なスペースがあり、かなり密度高く施設内容も考えたことが伺えました。良い改修例だと思います。

著者情報

角倉 剛
角倉 剛
私にとってのデザイン(設計)は問題解決です。どのような解き方をするかに設計の力点を置いているため、スタイル(モダン和風とか北欧風とか)にはこだわりません。
お住まいになる方の好みとか、建てられる場所の環境に相応しいものを作りたいと思っています。住宅は住まわれる方にとって、好きな洋服の延長のようなものであってほしいと考えています。 詳しいプロフィールはこちら